大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和46年(ワ)1967号 判決 1974年4月25日

主文

一  昭和四六年(ワ)第一九六七号事件引受参加人・同年(ワ)第七九二三号事件原告三利建設株式会社と昭和四六年(ワ)第一九六七号事件承継参加人・同年(ワ)第七九二三号事件被告東洋熱工業株式会社との間に、右三利建設株式会社が、別紙第一物件目録記載の土地につき、別紙地上権目録記載の地上権を有することを確認する。

二  右東洋熱工業株式会社の請求および右三利建設株式会社のその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は全事件を通じ(昭和四六年(ワ)第一九六七号事件については、参加により生じた分)、これを五分し、その一を右三利建設株式会社のその余を東洋熱工業株式会社の負担とする。

事実

第一  当事者の求める裁判

一  昭和四六年(ワ)第一九六七号事件

(一)  承継参加人(昭和四六年(ワ)第七九二三号事件被告。以下両事件を通じ参加原告という)

引受参加人(昭和四六年(ワ)第七九二三号事件原告。以下両事件を通じ参加被告という)は参加原告に対し、別紙第二物件目録記載の建物(以下本件建物という)を収去して別紙第一物件目録記載の土地(以下本件土地という)を明渡せ。

参加により生じた訴訟費用は参加被告の負担とする。

(二)  引受参加人

参加原告の請求を棄却する。

参加により生じた訴訟費用は参加原告の負担とする。

二  昭和四六年(ワ)第七九二三号事件

(一)  参加被告(三利建設株式会社)

参加被告と参加原告との間に、参加被告が本件土地につき、本件建物の所有を目的とする地上権を有することを確認する。

訴訟費用は参加原告の負担とする。

(二)  参加原告(東洋熱工業株式会社)

参加被告の請求を棄却する。

訴訟費用は参加被告の負担とする。

第二  当事者の主張

一  昭和四六年(ワ)第一九六七号事件

(一)  請求原因

1 参加原告は、昭和四五年一〇月三一日、脱退原告株式会社東京相互銀行(以下脱退原告という)から本件土地を買受け、所有権を取得した。

2 参加被告は、本件土地上に本件建物を所有し、同土地を占有している。

3 よつて、参加原告は、本件土地所有権に基づいて本件建物収去・本件土地明渡を求める。

(二)  請求原因に対する答弁

請求原因第一・第二項の事実は全部認める。

(三)  抗弁

1 訴外株式会社陣屋多門(以下陣屋多門という)は、昭和三九年九月三〇日当時、本件土地およびその地上の別紙地上権目録記載の木造瓦葺二階建工場(一階三六・七五坪、二階五坪)、附属建物(以上を旧建物という)を所有していた。

2 陣屋多門は、債権者脱退原告のため、本件土地につき、昭和三九年九月三〇日一番根抵当権を、同年一一月一五日(ただし七日の誤記と認める)二番根抵当権を、昭和四〇年二月二六日三番抵当権を、それぞれ設定する契約をした。

3 本件土地につき、右一番および二番の根抵当権設定当時、同地上に旧建物が存在していたが、陣屋多門は、脱退原告の承諾を得て、昭和三九年一一月下旬、旧建物をとりこわし、昭和四〇年一月末日、同地上に鉄筋コンクリート五階建の本件建物を完成したから、右三番抵当権設定当時、本件土地上に旧建物はなかつたものの本件建物が存在していた。

4 脱退原告は、本件土地につき、昭和四一年三月二六日裁判所の競売開始決定を得、同年一二月二〇日自ら競落して代金を支払いその所有権を取得した。

5 ところで、土地に対する抵当権設定当時、土地上にその土地所有者と同一所有者の建物が存在していれば、その後右建物が滅失しても競売前に同一土地上に建物が再築されているときは、法定地上権が生じるものと解すべきであるから、本件において、陣屋多門は本件土地につき本件建物のため法定地上権を取得した。

6 参加原告は、その主張のように昭和四五年一〇月三一日脱退原告から売買により本件土地の所有権を取得した。

本件建物については、訴外大成温調株式会社が一番抵当権を設定し、同会社は昭和四一年四月一四日(ただし、五日の誤記と認める)裁判所の競売開始決定を得、昭和四五年一二月三日参加被告がそれを競落して代金を支払い所有権を取得した。

7 したがつて、参加被告と参加原告は、右法定地上権の権利者と義務者の地位をそれぞれ承継した。

(四)  抗弁に対する答弁

1 抗弁第一、第二、第四、第六項の事実を認める。

2 同第三項中、本件土地につき、一番および二番の根抵当権設定当時、地上に旧建物が存在していたが、三番抵当権設定当時本件土地上に旧建物が存在していなかつたことは認め、その余の事実は争う。本件建物の完成時期は昭和四〇年四月九日である。

3 第五項は争う。

(五)  再抗弁

1 陣屋多門が債権者である脱退原告のため本件土地につき前記一番根抵当権を設定した当時、同地上に陣屋多門所有の旧建物があつたが、右当事者間で、昭和三九年九月三〇日、陣屋多門が近く旧建物を取こわすことから、建物を考慮せず地上建物のない更地として本件土地につき一番根抵当権を設定する旨の特約をした。したがつて、陣屋多門が旧建物を取こわしたうえ本件建物を新築した状態で脱退原告が本件土地を競落したとしても、右特約の債務者たる陣屋多門が法定地上権を取得することはなく、したがつて、それから本件建物の所有権を取得した参加被告が法定地上権を取得するいわれはない。

(六)  再抗弁に対する答弁

仮に参加原告主張のような合意があつたとしても、法定地上権は抵当権設定契約の当事者の意思で成立するのではないから、無意味である。

二  昭和四六年(ワ)第七九二三号事件

(一)  請求原因

1 昭和四六年(ワ)第一九六七号事件の抗弁1ないし7を引用する。

2 本件土地の賃料は、毎月一万六九五〇円が相当である。

(二)  請求原因に対する答弁

1 昭和四六年(ワ)第一九六七号事件の抗弁1ないし7に対する答弁を引用する。

2 請求原因第二項の事実は争う。

第三  証拠(省略)

(別紙)

第一物件目録

東京都目黒区青葉台一丁目二四五番三

宅地 三七五・二三平方メートル(一一三・五一坪)

第二物件目録

東京都目黒区青葉台一丁目二四五番三

家屋番号 二四五番三の一

鉄筋コンクリート造陸屋根五階建工場

一階ないし四階 いずれも二六二・〇八平方メートル

五階      五八・二四平方メートル

地上権目録

(一) 目的 左記建物所有の目的

東京都目黒区青葉台一丁目二四五番地三

家屋番号 二四五番二

一 木造瓦葺二階建工場 一階 三六・七五坪

二階     五坪

付属建物

1 木造亜鉛メツキ鋼板葺平家建工場

六三・六四平方メートル(一九・二五坪)

2 同 更衣室  二・四八平方メートル(〇・七五坪)

3 同 事務所 一七・三六平方メートル(五・二五坪)

4 同 変電所  九・九二平方メートル(三・〇〇坪)

(以上昭和三二年四月二二日保存登記)

(二) 期間 定めなし

(法定地上権の成立日 昭和四一年一二月二〇日)

(三) 賃料

1 昭和四二年七月一日当時一か月当り計九五五一円(坪当り八四円)

2 昭和四八年一月一日当時一か月当り計二万五九二五円(坪当り二二八円)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例